審査員と考えるサンゲツデザインアワードのこれから
「サンゲツデザインアワード2025」開催にあたり、審査員とサンゲツデザインアワード事務局(以下事務局)によるキックオフ座談会を開催しました。
本年の審査員は、昨年に引き続き山﨑健太郎氏、座間望氏、森本千絵氏、安藤北斗氏と、審査委員長は当社社長の近藤康正。過去に審査を経験しているチームならではの、アワードの更なる「進化」と「深化」にご期待ください。
本レポートでは、座談会で語られた内容から、アワードの役割、新たな試み、そして応募者への期待についてご紹介します。
サンゲツデザインアワードの魅力:「開かれたアワード」として
審査員の方々からは「サンゲツのアワードは、他の登竜門的なアワードと異なり、ものすごく“開かれている”」という意見があがりました。実際に、昨年の応募者は小学生から80代の方まで、デザインの分野で活躍するプロだけでなく、美術大学以外の学生や主婦の方など、非常に幅広い層に及びました。
「開かれた」という特性に対して、「応募基準の高さは“文化”(レベルや品位に繋がるもの)であり、ある程度のレギュレーションも必要では」という意見もありました。しかし、レギュレーションの設定より「ゴールをどこに置くか」が重要であるという議論を経て、私たちはアワードのゴールを「広くあまねく文化を創る」「デザインの裾野を広げる」ことにあると再確認しました。
だからこそ、現在の応募のしやすさ(ハードルの低さ)はネガティブではなく、むしろ「強み」であると考えています。
私たちのアワードは「開かれたアワード」として、完成度の高い作品はもちろんのこと、これからの「可能性を感じる作品」や、皆さまの「心を動かすアイデア」に出会える場にしたいと考えています。
昨年の応募作品群(1次審査)
今回の新たな取り組み:「オンライン化」と「相談会」
本年は、より一層応募者に寄り添ったアワードを目指し、運営方法をアップデートしました。
1. オンラインによるデータ提出の導入
アワードの「開かれた」特性をさらに推し進め、経験や居住地(海外含む)を問わず、より多くの方がチャレンジしやすいアワードとするためにオンラインによるデータ提出を導入しました。
2. 最終審査前の「相談会」の開催
応募作品の、さらなる「可能性」を支援できるよう、最終審査会の前に、審査員と応募者が直接対話できる「相談会」を新たに設けることにいたしました。
審査員からは、この初の試みについて以下のような期待が寄せられています。
- ●「出来上がったものを一方的に審査するだけでなく、フィードバックを通じてアイデアを“伸ばしていく”プロセスに関わることができ、審査の意味が生まれる」
- ●「例えばコンテストに寄せた“あざとさ”を感じてしまうような作品も、対話を通じて変わるかもしれない」
- ●「最終審査の前に対話ができて、そこからもう一段階、掘り下げて考えることができるなら、そこに応募者の“Joy(喜び)”が生まれるはず」
昨年の最終審査会の様子
事務局としても、応募者の方々と一緒につくりあげていくアワードにできるよう、よりよい運営を模索していきます。
応募者に求められるもの:「体験」と「身体性」
審査員の方々から「デザインはフィジカルなもの(触り心地、身体性)が重要」という点が繰り返し指摘されました。
昨今のデザイン傾向として、PCの画面上(Illustratorなど)だけでデザインを考え、「体験」を通さずにデザインができあがっていくことへの懸念が示されました。
- ●例① 飲料パッケージをデザインする際に、「飲む」という行為やそれが置かれる空間や時間、360°の見え方などを想像することが大事だが、実際に商品を飲まずに、観察せずにデザインにとりかかってしまう。
- ●例② 光や影を感じ取る現実の「体験」が少ないため、光のあたり方などが不自然な合成ができあがってしまう。
このような「体験」から切り離され、頭だけで考えられたデザインは、飲料パッケージの場合、人間の本能的な「おいしい」「飲みたい」といった感覚に訴えかけることが難しい、という指摘でした。
今年のアワードでは、机上のアイデアに留まらない、応募者ご自身のリアルな「体験」に基づいた「身体性」を伴う提案が期待されています。
昨年の最終審査会の様子
昨年のアワードの1次審査作品と審査員。
皆さまの応募へのヒントとなりましたら幸いです。 ご応募を心よりお待ちしております。